印象派は、出来るだけパレット上で色を混色させずに、細かいタッチで絵具をカンヴァスにおくことにより、伝統的な技法では得られなかった明るい光の再現に成功しましたが、それはあまりにも感覚的で、曖昧なものでした。ジョルジュ・スーラ(1859-91)は科学的法則に基づき、タッチを分割し網膜上で混色する「視覚混合」の技法を開発することによって、印象派よりもさらに明るい光の色の表現を実現しました。「新印象主義」の誕生です。新印象主義は安定した構図と明確な画面構成を可能にしましたが、その厳格さは多大な集中力と持久力を要求し、スーラの死後ほどなくして新印象派の画家たちはこの技法(いわゆる点描法)からは次第に離れていきます。しかし美術に科学を導入するこの試みはモダンアートのひとつの原点として後の世代に大きな影響を与えました。
創始者スーラは31歳4ヶ月で夭折したため遺された作品が少なく、また後世の評価の高まりとともに美術館に収められた主要な作品の借用は困難となり、新印象派を本格的に紹介する展覧会は我が国ではこれまで1985年にただ1度開催されただけでした。今回は世界各国の美術館やコレクターから借用したスーラ、シニャック、ゴッホら、新印象派を代表する名品約110点(作家数23名)で新印象派の全貌を紹介いたします。