日本は世界でも類を見ないほど、豊かに変化する四季折々の自然に恵まれています。ひとときも同じ姿をとどめない自然の儚さは、それゆえに刹那の美をともなって、人々に生の尊さを一層実感させ、古来より数多くの和歌や物語、絵画の題材となってきました。花鳥風月、日月星辰。移ろう季節や何気ない風景の中に自己の人生を重ね、そんな自然の美しさ、儚さに満ちた一瞬を、多くの画家たちが眼前にとどめようと試みてきました。
しかしながら今日、近代化の名のもとに横行する自然破壊はとどまるところを知らず、災害などを通して現れる自然からの警笛に、私たちも自然と向き合う姿勢を再考すべき時が来ています。そして、文明の発達とともに自然の姿が変化していく過程もまた、近代以降の絵画のモチーフとなってきました。
今回の展覧会では、江戸時代の山水画から現代の抽象絵画まで、自然の風景を題材としている作品群を中心に展示いたします。先人たちが画上にとらえた日本の自然の姿を通し、これからの私たちと自然との関わり方を見つめ直す機会とすべくご高覧いただけましたら幸いです。