―世相映す「ポスターと浮世絵」―
今日誰もがポスターと認める事物は、19世紀末に欧米から商品と共に、その広告宣伝物として物理的に流入しました。多色石版印刷を用いて制作された、大判のポスターに魅了された日本人は、すぐさまその国産化に着手し、明治代半ばには日本人の手によって初期作品が世に出されました。
我が国におけるポスターのデザイン上の発展は、その源流を浮世絵、「チラシの元祖」といえる「引札」(ひきふだ)、現在でいうところのカレンダーである「絵暦」(えごよみ) などに見ることができましょう。
制作者たちの思い・メッセージが込められたポスターは本来、実用的な広告印刷物でありながら、次第に本画同様に見応えある美麗な鑑賞性を備えた作品としての価値が求められるようになります。
本展では、名古屋市に本社を構える酒類販売会社サカツコーポレーションが所蔵する「サカツ・コレクション」約500点の中から、明治・大正・昭和にかけて制作されたポスターを中心に約80点をご覧いただきます。
作品は女性を主題としたものが大半を占めています。これらのポスター制作に関わった画家は伊東深水、北野恒富といった著名画家たちであり、浮世絵から続く「美人画」の表現をたどることができます。
日本の広告芸術の歴史とその確かな技術力、時代の風俗、世相、美意識を映した日本のポスターの魅力を、会場で感じ取っていただければ幸いです。