香水瓶は、目には見えない香りの表情を伝えるため、香水が持つイメージに沿うようにデザインされています。
フランス革命後、王侯貴族の間で流行していた香水文化が一般富裕層にも広まり、それまで愛用されていた陶器製の香水瓶から、中を見通す透明性や自在に色や形を成形できるガラス製の香水瓶が注目され始めます。ヴェネチアやボヘミアといったガラス工芸が盛んな地域では、それぞれの特性を活かした新しい様式の香水瓶がつくられました。19世紀後半には、アール・ヌーヴォー様式を代表する作家エミール・ガレやドーム社により、自然の曲線美をモチーフにした優美なデザインの香水瓶がつくられます。
やがて、ゲランやキャロンといった香水商達も、自社が生み出した香水を入れる瓶のデザインに着目し、ガラス会社やガラス工芸家と連携して技巧を凝らした香水瓶を制作していきます。宝飾作家であったルネ・ラリックは、20世紀に入るとコティをはじめとする香水商からの依頼を受けてアール・デコ様式の魅力的な香水瓶を次々に発表しました。同じ頃、ファッション界においてブランド概念が確立し、現代にも続くシャネルやディオールといった有名ブランドが誕生します。そして、各ブランドのコンセプトや美意識を象徴する香水に合わせて、ガラス作家やデザイナーのセンスを強く反映した香水瓶がデザインされるようになります。
本展覧会では、個人蔵のコレクションを中心に18世紀末から20世紀までの洗練された香水瓶や、ポーラ文化研究所蔵の当時のファッション版画を合わせて約260点を展示、紹介します。香水瓶が表現する魅惑の香りの世界をご堪能ください。