中国で生まれた文字(漢字)は東アジア各地へ広がり、国際的な文字として長い間君臨しました。しかし、現在ベトナムや韓国・北朝鮮では民族文字を中心に文章を書くようになっています。中国を除いて、現在まで漢字文化を維持しているのは、早くから漢字かなまじり文で文章を書き始めた日本だけです。しかし、日本の漢字文化の将来も決して安泰とは言えません。21世紀の文字文化のあり方を考える上でも、古代社会における文字とは何かを真正面から問い直す必要があります。
そこで、本企画展示では、本館所蔵の約100巻の正倉院文書複製品を中心として、全国各地の漆紙文書、木簡、墨書土器などの出土資料や金石文、さらに文房具などの文字の周辺資料、そして中国・韓国の古代文字資料をも組み合わせて古代日本の文字世界を復元し、それらの文字を通じて古代社会の実像を描きたいと思います。