高崎市美術館では、独自の詩想をもとに、月や妖精などの形象によって自然との語らいを描き続ける画家「石澤久夫の仕事」展を開催いたします。石澤久夫は、 1932(昭和7)年、高崎市に生まれました。群馬県立高崎工業高等学校在学中の 1947年より、終生の師と仰ぐ井上房一郎(1898-1993)にセザンヌを中心とする絵画基礎理論の指導を受けます。1959年、井上の紹介で建築家アントニン・レーモンド(1888-1976)と知り合うことで1961年の群馬音楽センター壁画制作に主体的に関わり、地元若手作家とともにレーモンドデザインによるフレスコ壁画を完成させました。以後、長年の壁画制作で培われた大画面の構成力は油彩制作でも活かされ、近年のモニュメンタルで力強い作風を育みました。一方でパレットでの混色をせず、面相筆に絵具を直接とり、薄塗りを重ねていく繊細な筆触を活かした画布には、色層を透かす効果とともに、自然と語らう詩想が込められています。
本展では代表作《抱擁》(1981年)をはじめとする1940年代から2000年代までの油彩作品34点や、水墨による長松寺 (ちょうしょうじ) 襖絵(1996年)と極細ペンによる線描画などモノトーン作品15点、音楽センター壁画制作当時の貴重な写真資料などを通して、石澤久夫の多様な仕事をご紹介します。また高崎市美術館コレクション展を同時開催いたします。