イタリアは古代より脈々と続く彫刻の伝統を持った国であり、ミケランジェロをはじめとしてこれまでに数多くの偉大な彫刻家を輩出してきた歴史があります。また、現代においてもイタリア彫刻は世界の中でも際立っており、多くの彫刻家がすぐれた作品を制作しています。
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍し、印象主義絵画の考え方を彫刻の中で実践したメダルド・ロッソを起源に、イタリア現代彫刻は展開してきます。運動の連続性を表現した未来派ジャーコモ・バルラ、二つの大戦のあいだで活躍し、その後のイタリア彫刻の展開に大きな影響を与えたアルトゥーロ・マルティーニなどがこれに続きます。戦後には、イタリア彫刻の人間中心主義の伝統を捨てることなく、創作活動のあらたな可能性を追求し前衛として新しい価値を与える彫刻家がでてきます。「馬と騎手」シリーズや肖像彫刻を制作したマリノ・マリーニをはじめとして、人間に対する深い愛情を表現したジャーコモ・マンズー、空間を自由に駆使し新しい詩的なフォルムをつくり出したペリクレ・ファッツィーニ、無駄な装飾をはぶき女性を理想化した優雅なフォルムのエミーリオ・グレコ等の多くの彫刻家たちです。
本展覧会は、これまでに収集した彫刻作品29点に併せて、素描、版画の作品約50点を展示し、伝統と前衛の両面をもちながら多様な彫刻作品を生みだしてきたイタリア現代彫刻を紹介するものです。