奥村厚一(1904-1974)は生涯に亘って風景を主題として描き続けた画家です。
奥村は京都に生まれ、京都市立絵画専門学校に学んだ後、同研究科に進むかたわら西村五雲に師事しました。昭和初期から官展でその風景表現が認められ、1946(昭和21)年の第2回日展では、雪の積もる木々を冷気の中に静謐さや清浄感をもって描き出した《浄晨》が特選を受賞しています。
その後、1948(昭和23)年に山本丘人や上村松篁らとともに「創造美術」(現在の創画会)を結成し、新しい日本画の表現を切り拓く運動に身を投じました。自身の表現を厳しく問い直す機会を得た奥村の作品は、描く対象こそ以前と同じく風景を主題とするものでしたが、それまでの繊細で清澄な画面から一転して、自然の生命感やリズムを捉えて力強く形象化する作風へと移ってゆきました。
このような作風の変化はありましたが、自然に対する親しみと観察から出発し、写生からその本質を見据えて真摯に向き合う姿勢を奥村は一貫しています。代表的な作品と各地のスケッチなどもあわせて展示し、その画業と魅力を改めてお伝えしたいと思います。