1990年に<京の美感>、91年に<美の変革>、92年に<美の融合>をサブタイトルとした「京都工芸の新世代」展を東京の松屋銀座本店美術画廊で企画してから、早いもので20余年が経過しました。当時を振り返ると、京都の俊英工芸作家の<今>を東京の中心地で紹介するという強い意気込みと、気負いを抱いて開催に臨んだ心境が思い出されます。
京都の工芸は陶磁、木竹漆工、染織、金工など日本の工芸のあらゆる分野に広くおよんでいます。しかも今日なお生き生きとした活動を行っている点は、他地には見られない特色であります。その作風や技術を取り上げても伝統の蓄積を感じさせるものから、時代の先端をゆくものまで多様な様相を保っています。それを俯瞰した「京都工芸の新世代展」は21世紀に向けての工芸界の将来を予感させるグループ展であると評され幸いにも東京で高い反響を呼びました。
今回の企画は新世代展に招待、また招待構想に含まれていた人々に久しぶりに呼びかけて実現した地元京都での宴であります。「二八会」というグループの名称は、江戸時代以来の庶民生活の中で親しまれた蕎麦屋<二八そば>に由来しています。同人相互の交流の縁を得ていらい築いてきた<絆>の輪を、今回の展観で作品を通じてさらに多くの鑑賞者、愛好家の人々にも広げたい、そのような願いをもって発起しました。個性豊かな作品のいずれもが<二八そば>のように親しまれつつ、生活に潤いと心の糧を与えてくれるものと確信しており、この宴を楽しみにしたいと思っています。
中ノ堂一信 (工芸史、工芸評論家、京都造形芸術大学・大学院客員教授)