タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは2月15日(土)から3月15日(土)まで、二川幸夫個展「フランク・ロイド・ライト」を開催いたします。2013年3月に逝去した建築写真家二川幸夫は、1970年に自身で建築専門の出版社を設立し、その確かな評価眼を通して捉えられた写真と、鋭くごまかしのない批評で国内外の建築界に大きな影響を与えてきました。タカ・イシイギャラリーでの初の個展となる本展では、二川が取材活動を通じて20数余年にわたり撮影した、フランク・ロイド・ライト建築の写真作品約20点を展示いたします。
私は、建築を評価するには、まず実物そのものを見なければならないと思っている。(中略)
建築は一つだけ独立して建っているわけではなく、その地方の気候や環境に多くが影響され発展したものである。また古来から建築家はよく旅行しているし、近代になってもフランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエ、アルヴァ・アアルト、ルイス・カーンといった巨匠たちは、優れた旅行記を遺している。(中略)
1959年以降、1年のうち3分の2は日本から離れている。また日本に滞在している3分の1の期間も、日本中を駆け巡っている。旅は、建築に限らず衣食も教えてくれるし、平地の文化、山の文化、都市の文化、様々な体験をさせてくれる。
今年で77歳になるが、このローテーションを変更しようとも思わないし、まだまだ建築のことを見極めたいと思っている。
二川幸夫
(二川幸夫『GA日記』A.D.A. EDITA Tokyo Co., Ltd.、2009年、あとがきより抜粋)
二川幸夫の建築写真の旅は60余年に渡りました。その旅は日本の民家に始まり、やがて世界中の建築に広がっていきました。詠み人のわからない古民家から、荘厳な古典、端整な近現代の建築まで、世界の建築史を時空を超えて横断し、それらを同じ評価軸の上で再構築する膨大な仕事でした。
アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの作品群は二川の旅の中、多くの時間を割いたものです。ライトの残した約400の建築作品を一つひとつ訪ねて、その本質を探究し、写真というフォーマットで記述していきました。
ライトは二川にとって重要なテーマでした。 優れた作品に対してその探求は深度を増し、何度も訪ね続けて、その度に撮影を繰り返しています。
2013年12月 二川由夫
二川幸夫は1932年大阪市生まれ。早稲田大学文学部で美術史を専攻し、在学中に同大教授であった日本建築史の田辺泰の勧めで岐阜県高山市の日下部邸を訪れる機会を得ました。これをきっかけに以後日本各地を旅行し、6年を掛けて日本の民家を巡って撮影した写真を、1957年より『日本の民家』全10巻として発表、1959年に毎日出版文化賞を受賞します。1970年には、建築書籍の編集、出版を専門とするA.D.A. EDITA Tokyo Co., Ltd.を設立し、『GA』シリーズ(既刊77巻)や、ライト・ファンデーションの全面的な協力を得て『フランク・ロイド・ライト全集』(全12巻)を発行するなど、世界の現代建築、建築史を記録し発表された写真は世界的にも高い評価を得てきました。旺盛な取材活動で知られた二川は、優れた建築を追って世界中を駆け巡り、数多くの写真作品を残しています。建築の歴史をドキュメントする以上に、写真というメディアを通して独自の建築解釈を表現し続けた二川の作品をこの機会に是非ご高覧下さい。