イタリアのマジョリカ陶器は、酸化錫を用いた白色不透明の釉薬がかけられた陶器で、中世末期からルネサンス時代を通じてイタリア各地で生産され、ヨーロッパ諸国に広く知られていました。 初期のマジョリカ陶器は、緑や褐色など釉薬の色彩も限られており、また絵付けも比較的素朴でしたが、特に15世紀後半からは、華やかな多色絵付けが行われるようになり、文様も複雑化、さらに陰影を付けた絵画的な表現がたいへんに高度化することにより、ルネサンス時代の装飾芸術を代表する分野として発展しました。
明るく、あたたかみのある色彩や流麗な描線など、造形的な特徴と同時にさまざまな図像や模様にルネサンス時代のイタリアの美意識や精神性が反映され、歴史的な興味をかき立てる魅力を持っています。
マジョリカ陶器の生産地のなかでも、特にイタリア北部の都市ファエンツァは、フランス語で陶器を意味するファイアンスの語源となるほど歴史的に重要な窯であり、今日でもイタリアの中心的窯業都市です。 本展は、同地にあるファエンツァ国際陶芸博物館のコレクションから、特に優れたマジョリカ陶器94作品と、マジョリカ陶器の発生に大きな影響を与えた東洋陶器の歴史的な陶片21点等を展示し、14世紀から17世紀に至るイタリア・マジョリカ陶器の全容を歴史的展開に即してご紹介します。