心が集中すれば、なにかが出来る
―だめな子なんかひとりもいない。
宮城まり子さんの確信のもと、日本初の肢体不自由児療護施設「ねむの木学園」が設立されたのは1968年のこと。46年目を迎える今でも、「すべての人々に対し、その能力を生かし人として正しい生活を送ることができるようにするのが福祉ならば、福祉は文化であり文化は福祉にある」という理念は揺らぐことがありません。本展覧会では、ねむの木学園の子どもたちの作品約250点を展観します。近年、注目を集めているアール・ブリュットは「生(き)の芸術」を意味し、既成の美術教育や概念を超えた多種多様なアートとして定着しました。子どもたちのみずみずしい作品には、強烈な色づかいや自由奔放な表現とともに繊細な描線や対象へのこだわりが見受けられ、つよくやさしい生命力があふれています。制作への歓喜あふれる作品群をどうぞお楽しみください。
もう、ずいぶんたちますね。でも私は、懐かしい思い出ばかりです。
ねむの木学園の子どもたちを見ていて思いつき、クレヨンを部屋中にひろげました。楽しそうなきれいな色、子どもたちはワーッとなにやら描き出しました。そうだ、絵を授業に取り入れよう! 画家の谷内六郎さんに電話をして、「こどもいっぱい、クレヨンいっぱい、来たい?」
六郎さんは、「どうして今まで、教えてくれなかったの」と、そのまま家を飛び出したらしく、3時間ほどして学園に見えました。「こどもの絵は、教えちゃいけない、褒めてもいけない、悪いといってはもっといけない」。私も、そう思います。
絵の時間が始まって、9月に渋谷で展覧会をし、そして11月、この横浜で開きました。その時の皆さまのお顔、嬉しそうな顔、泣いていらっしゃる顔。私も毎日、お客さまの前で同じことをしていました。だから、横浜を好きになり、横浜人になりました。
その横浜で展覧会。ああ、神様、どうかお守りくださいませ。
宮城まり子