調度とは、日常生活に必要な、身の回りに置かれた道具のことで、平安時代の寝殿造りに暮らす公家社会では、祭祀具や仏具から、文房具、音楽具、容飾具、屏障具、坐臥具などさまざまなものが用意された。鎌倉時代から武家独自のものが加わり、時代や階層とともに変化した。桃節句の雛道具は、大名奥方における婚礼調度の華やかさを、今に伝えている。
日本では近代になるまで庶民の家具は少なく、武家や公家の住まいにおいても、限られた家具を必要な時に出して使う、室内に家具を置かない生活が長かった。豪華な洋家具であふれる欧米のスタイルとは、まったく異なっていた。
近代の和風建築における調度は、室町後期の書院造り・床飾りと、茶道に由来する形式のものが多い。
昭和初期の邸宅である遠山邸では、家の格式にふさわしく、快適に暮らすための、また、来客をもてなすための伝統の調度が集められた。さらに、前田南斉など当時人気の木工作家に注文制作を行っている。
本展は、鎌倉時代の秋野蒔絵手箱から、昭和の南斉コレクションまで、各時代の名工による調度と和家具60点を展観します。木工、漆工、竹工作品それぞれの材料の特性を活かしながら、実用性を超えた美しさをご堪能ください。
*9月28日(日)、10月11日(土)の遠山邸2階公開日には、応接室に室礼された前田南斉作「四季草花彫嵌飾棚」がご覧いただけます