あなたはどんなものを見て、美しいと感じますか。自然の風景、整備された都会の町並み、人の容姿やファッションなど、私たちは日常さまざまなものを目にし、心を動かされています。美意識とは、「美しい」と思う一人ひとりの心の反応であり、誰もが持ちうるものです。しかし心地よいものや形が整っているものだけが美しさの基準ではありません。人は混乱したものや恐怖感にさえ、美を感じることがあります。
さらに現代の美術の目的は、造形的な美しさの追究だけではなくなっています。概念そのものや見る人との関係性、コミュニケーションに至るまで様々な目に見えない要素が表現の手段となっているからです。私たち日本人の歴史では、"あはれ" "わび・さび"などの思想がその時代の美意識として形成されてきたように、現代の作家において、自分たちの生きる世界の精神性や目に見えない問題意識を伝えようとする選択もまたひとつの美意識だと言えるでしょう。
本展覧会は、造形を通して作品の背後に存在する思考としての美意識を見つめる企画です。家族、仏教、風景などのテーマを深く見つめ描いた野口徳次(1908~1999)や、現代社会について問いかけつづける光野浩一(1965~)らの作品をご紹介します。鑑賞を通じて、何を美しいと思うのか、自分自身の美意識と対話するきっかけとしていただければ幸いです。
※期間中「初春」をテーマとして山内多門ら郷土作家の作品も同時展示致します