伊津野は風土によって培われた魂を鑿で造形する。手が施すのを待っている木との交感。美しい詩句は、まずは強靭な強さを内に秘め、性を超えた優しさと厳しさを湛えた美しき女性像に捧げられ、木を削る槌音と木霊して聖歌を奏でる。そして光を抱き、風が晒し、花々が薫りを添える。感性は解き放たれ、その刻々が装飾や感傷といった余剰なものを削ぎ落とし、純粋で厳しいフォルムと言葉を現出させる。その女性像が凜としてあるのは作家の日常の証であり、佇まいであり、それが稀有なのだ。
(作品集に寄せた言葉「大切なものはここに」より) 島田誠