東京都現代美術館では、メキシコのモダニズムを代表する建築家、ルイス・バラガン(1902-1988年)の活動を、安藤忠雄氏の会場構成により、紹介することになりました。
メキシコ第二の都市グアダラハラの農場で生まれたバラガンは、戦間期パリでのル・コルビュジエとの出会い、スペインのイスラム建築との邂逅などを経て、色鮮やかな壁や効果的な水の使用を特徴とする住宅や庭園を生み出しました。作品の多くがメキシコにあるため、1970年代に入ってから注目されるようになった(1976年にニューヨーク近代美術館で個展、1980年にプリツカー賞受賞)この建築家の全貌を、様々な映像や模型、ドローイング等によって探ります。
本展はバラガン財団とヴィトラ・デザイン美術館の企画により行われる国際巡回展の一環で、生誕100周年を迎える本年東京で開催されるものです。シュルレアリストとの交流、都市の開発を進めた実業家としての活動など、多面的な表情をもつこの建築家を検証することは、ヨーロッパと複雑な関係にあったメキシコのモダニズムだけでなく、日本の建築文化に対してもさまざまな示唆と刺激をもたらすことでしょう。
展覧会は、バラガンの制作活動を貫くテーマに基づき、4つのセクションから構成されます。
■第1部では、代表作である〈エル・ペドレガルの分譲地〉の開発と〈バラガン邸〉をとりあげ、バラガンの自然と建築の関係についての考え方を分析します。
■第2部では、バラガンの活動の中で最も興味深い、住宅建築(〈ゴンサーレス・ルナ邸〉〈ガルベス邸〉〈プリエト・ロペス邸〉等)を、特に外部空間と内部空間との関係性に着目して検討します。
■第3部では、バラガンの建築における、抽象的な形態の探求について焦点をあてます(〈トゥラルパンのカプチン派修道会の礼拝堂〉〈サン・クリトーバルの厩舎〉等)。
■第4部では〈ロマス・ベルデス〉等にみられる都市計画への関心や、〈サテライト・タワー〉に代表される都市の中の象徴的な構造物の意味について考えます。
以上の国際巡回の作品に加え、安藤忠雄氏が会場構成を行う東京会場では、晩年の代表作〈ヒラルディ邸〉の同スケールでの再現などが予定されております。