玉村方久斗は一八九三(明治二十六)年に京都に生まれた日本画家です。京都市立絵画専門学校を卒業して間もなく頭角を現し、東京に出て日本美術院で注目される若手画家となりますが、やがて日本画の集団からは離れ、大正から昭和にかけての前衛的な美術運動に参加して、立体造形や舞台、文学、版画など多方面に才能を発揮しました。その後、再び自身の絵画表現を深めてゆきましたが、一九五一(昭和二十六)年に五十八歳の若さで亡くなっています。没後は異端の画家として等閑に付されがちで、その芸術の軌跡がうかがえるようになり評価が高まったのは近年になってからのことです。
しかし田辺市出身の実業家で慧眼の美術品収集家としても知られた脇村禮次郎氏(一九〇四~一九八八)は、早くからその表現に目を留め、およそ三〇点もの作品をコレクションしていました。現在(公財)脇村奨学会の所蔵品となり、当館に寄託されているそれら作品を、玉村方久斗の生誕一二〇年を機に集中して展示する機会をもちます。