佐藤翠は1984年愛知県生まれ。現在は名古屋市を拠点に制作しています。色とりどりの服が詰まったクローゼット、高いヒールの靴が勢揃いした棚、鮮やかに彩られた花々など、女性であれば一度は憧れる光景を佐藤翠は私たちに見せてくれます。一方作品の細部へ目をやると、大胆なタッチや意図的な塗りムラは対象の輪郭を曖昧にして抽象性を帯びていき、観る者をそのまま画面の中に取り込むような吸引力を発揮します。芥川賞受賞作家・中村文則の小説『去年の冬、きみと別れ』(2013年、幻冬舎) の装画、また『花椿』(資生堂) では原田マハの短編小説の挿画を手がけ、今年3月には伊勢丹新宿にて公開制作を行うなど、佐藤翠はその活躍の場を広げています。「VOCA展2013現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(2013年、上野の森美術館、東京) では大原美術館賞を受賞。受賞作は同美術館に収蔵され「Ohara Contemporary」(2013年、大原美術館、岡山)にも出展されました。今回の展覧会には、イギリス滞在時に制作した作品が出品されます。観る者を幸福へと誘う宝石のような作品をぜひご覧ください。