平成25年11月1日、開館10周年を迎えた、しもだて美術館の掉尾を飾る企画展として、「布による彫刻」とも称され、創作人形を芸術の域にまで高め、男女を問わず国内外に多くのファンを持つ作家、与勇輝の展覧会を開催します。
与勇輝は、1937(昭和 12)年に神奈川県川崎市に2男4女の末っ子として生まれました。絵描きになるのが夢だった少年は、両親の勧めで商業高校に入学しますが、2年で中退。19歳でマネキン人形の会社に就職。デザイン、製作、ディスプレイなどに携わりますが、やがて独自のものを創りたいとの思いから、1965(昭和 40)年、布の材質にこだわった人形を創り始めます。1968(昭和 43)年、人形作家曽山武彦氏に師事し、1970(昭和 45)年、岡本喜八郎、辻村ジュサブローらの人形作家のグループ人形展に初参加し、シンデレラを表現した「灰かぶり」を出品します。1977(昭和 52)年には個展を開催。1983(昭和 58)年頃より、人形制作に専念していきます。1990年代より日本国内で巡回展を始めます。海外では、ニューヨーク、パリ、サンパウロで個展を開催。2006(平成 18)年にもパリ・バカラ美術館で個展を開催するなど、次々に各地で展覧会を開催し、絶賛されています。人形の個性を際立たせる小物の一つひとつまで手作りされ、一枚の布から立体へと生き生きとした表情豊かな作品は、物言わぬ瞳で多くの人々を温かな優しい空気で包み込み語りかけます。
今展では、与勇輝のライフワークである明治から昭和前期を時代背景にした作品や、だれもが親しんだ外国の童話をモティーフにした作品、映画監督小津安二郎へのオマージュ作品など、初期から最新作まで与勇輝の人形芸術の世界を100体の作品からご紹介します。
また、関連行事として、会期中には、作家による作品解説とサイン会、公益財団法人いばらき文化振興財団登録アーティストによる、ハープとフルートを中心にしたギャラリーコンサートを開催します。