季節の変化に富んだ日本では、時の流れとともに移ろう自然に心を寄せ、四季折々の風物を歌に詠み、絵に表してきました。中でも、花は四季の表現に欠かせない題材であり、また季節の情趣を重んじる浮世絵や美人画においても、彩りを添えるモチーフとして好まれてきました。
時に、女性は美しい花に例えられますが、満開の花がやがては散り行くように、女性の美しさもまた移ろいやすいものです。花と美人は、「華やかさ」と「儚さ」という共通するイメージによって結びつきやすく、近代の日本絵画ではとりわけ好んで描かれてきました。
本展では、春夏秋冬、巡る季節に沿いながら、花や美人を描いた日本画と油彩画を一堂に展覧します。主な作品は、梅の精を描いた横山大観の《羅浮仙》や、しだれ桜と舞妓の競演が艶やかな横尾芳月《祇園の花》、野辺に横たわる女性に可憐な白百合を添えた黒田清輝《木かげ》、菊文様の着物が清楚な上村松園《舞仕度》(11月17日(日)まで展示)など近代日本絵画約60点です。私たち日本人の自然観や美意識を伝えるこれらの作品には、美しいだけではない奥深い季節の情趣をしみじみと感じていただけるでしょう。
また同時開催の「日本洋画の美女たち」(新館)では、小菊を手にした愛娘を描いた岸田劉生《毛糸肩掛せる麗子肖像》を特別公開します。