臼井恵之輔 (うすい・けいのすけ) は、1937(昭和12)年、茅ヶ崎に生まれ、現在も同地にて制作活動を続けています。
多摩美術大学を卒業した1960(昭和35)年から教育の現場にたち、中学校美術の指導をする傍ら、中央の美術公募団体などへ積極的に出品します。現在主要な作品発表の場となっている新制作展では、第37回展(1973年)に新作家賞を受賞。第59回展 (1995年) でも同賞を受賞し、1997(平成9)年に会員となっています。
アクリル画を中心に制作していた1960年代後半から1990年頃にかけての作品は、その緻密な表現に圧倒されます。なかでも、デカルコマニーという転写法の意をもつ絵画技法を用いた《トライアングル》シリーズは、水で溶いた絵具に浸した三角形の紙切れを画面にひたすら押しつけ、そこから生まれる独自の造形を展開してゆきます。
1990(平成2)年以降は油彩画に転じ、その特性をいかした重厚なマチエールにより“石窟”をテーマにしたシリーズを制作します。それまでの画風からは一変する大胆な筆のタッチと鮮明な色調。臼井の創造の探求心は尽きることなく続いています。
《Future》は、近年の臼井作品に多く登場するタイトルです。「温故知新―古きをたずねて新しきを知る―」という言葉がありますが、新しい表現を生み出していく過程においては、常に古いものを学び、理解することが大事であり、その上で「未来」を見据える意識がこのタイトルに込められています。
今回の展覧会では、初期の古代文字をテーマにした油彩画を加え、現在までの代表的な大作約20点と、スケッチ等の資料も併せて展示いたします。