「再建の初夏を彩る」 ―昭和21年4月25日、南日本美術展の開催をつげる社告が、紙面を踊りました。この見出しは、敗戦により廃墟と化した鹿児島の美術愛好者たちの眼に、希望のシンボルとして映ったことでしょう。昭和29年には、鹿児島市立美術館の開館を祝って県美展も創設されます。この二大公募展の誕生により、鹿児島在住画家たちの作品発表の舞台が確立していきました。
そもそも鹿児島は、多くの洋画家たちを輩出し、洋画王国を自負してきた土地柄です。戦後に入ってからも、東郷青児、山口長男、海老原喜之助、吉井淳二など、多くの画家たちが中央で活躍し、その余波は地元の鹿児島にも及んでいます。二科展や独立展といった中央展の鹿児島巡回がその一例です。
一方、地元からも岩下三四や花田正実といった有力な画家たちが制作に励み、中央の展覧会へ果敢に挑戦するようになります。
本展は、当館所蔵品の中から、主に地元鹿児島で活躍した洋画家の作品を編年で紹介し、戦後鹿児島の洋画史を概観しようという試みです。
終戦直後の物資難を物語る、画材に苦心した作品から、写実全盛期の穏健な表現を経て、1950~60年代、フランスのシュルレアリスムやアンフォルメルの影響を受けた前衛的作品まで、画風の変遷もお楽しみ下さい。