欧米を手本に近代国家づくりが進められた明治時代、子どもの暮らしにも大きな変化がありました。明治5年 (1872) の学制発布によって、全国に小学校が開設されます。洋風建築の校舎、寺や民家を利用した教室で、子どもたちは欧米の教授法にもとづく授業を受け、校庭では体操や遊戯で体を動かしました。男の子は修学によって立身出世を目指し、女の子は良妻賢母となるべく礼法をしつけられ、成長していきました。
一方、子どもの本分といえる遊びは、江戸から続く竹馬、羽根つき、お手玉などに加え、日清戦争以降は兵隊ごっこが流行り、世相が反映されていたことがうかがわれます。
また、はじめ上流階級の子どもの晴れ着や外出着に限られていた洋服は、30年 (1897) 頃より庶民の間にも普及します。髪型は、男の子は五分刈り、女の子は結髪のほか、大人の流行にならってリボンを結び、お下げやマーガレットといった洋風スタイルも好まれました。
このたびの展覧会では、楊洲周延 (ちかのぶ) や宮川春汀 (しゅんてい) 、山本昇雲 (しょううん) らの作品から、明治時代の子どもの教育、さまざまな遊び、風俗を紹介します。あわせて、小学校で使われた視覚教材の掛図や、双六 (すごろく) や姉様人形といったおもちゃ絵も展示します。明治時代の子ども絵を通して、江戸から続く風俗や維新後の新しい文化をご覧ください。