1960年に東京藝術大学音楽学部楽理科に在籍中の小杉武久は、刀根康尚、塩見允枝子、水野修孝らとともに、「グループ・音楽」を結成して、鮮烈なデビューを果たしました。やがて小杉はフルクサスのメンバーにも加わり、その活動は世界各地で紹介されることになります。また、小杉が主催した「タージ・マハル旅行団」のストックホルムからインドのタージ・マハルにいたる「ワールドツアー」はひとつの伝説であり、芸術による自由の積極果敢な実践でした。1977年にはマース・カニンガム舞踏団の音楽監督に就任。ジョン・ケージとともに、その活動は、世界の注目を引きつけました。
小杉は、主としてエレクトリック・ヴァイオリンをしようしながら、みずからの肉体の発声も含めて、さまざまな音素材を駆使して、ラディカルなパフォーマンスを展開しています。また、初期の作品から現在にいたるまで、ウェイヴ(波)として空間に波及していく音のありかたに関心を持ちつづけています。今回の鎌倉でのインスタレーションでは、壁に投射した波の映像を背景に、天井から吊るしたラジオ受信機と発信機間に生ずるビート音が、室内気流の変化によって刻々と変化する小杉の代表的な作品《Catch Wave》を中心に、新旧の作品8点が並べられる予定です。