このたび竹喬美術館では、広島県府中市出身の美術史家山岡泰造氏 (関西大学名誉教授) が蒐集した中国の明清時代の絵画をご紹介します。山岡コレクションの公開は平成22年の「現代の中国絵画」展に続くものです。
山岡氏のコレクションは、明代(1368-1662年)から清代(1644-1911年)の500年にわたる絵画を体系的に蒐集したものではありません。狩野派など室町絵画の研究のかたわら、私淑した橋本末吉氏の明清絵画コレクションを勉強する中で、遺例の少ない秀作を拾い上げるかたちで集めたものです。また、明清といえば、萬暦年間(1573-1615年)から康熙年間(1662-1722年)にかけての明末清初の絵画が注目され、呉派文人画から董其昌、四王呉惲へつながる正統派、混沌とした世相を反映する奇想的絵画、複雑な内面を描いた遺民絵画、経済力の発展を背景とする江南諸都市の会派など、多様で個性に満ちた時代があります。山岡氏は、この中において、都市経済の目まぐるしい進展によって勃興してきた各地の画家に注目して、従来の北宗画 (職業画家系) と南宗画 (文人画系) という二大潮流にとらわれず、いわば明清のダイナミックな時代潮流における画家の活動を、地理と経済の二点を重要要素として考慮し、蒐集したように思えます。
今回の展覧会では、山岡コレクションのうち、京都国立博物館と黒川古文化研究所に寄託している作品を中心に、約60点の明清絵画を展示します。山水画として鄭重 (ていじゅう、明) の《山水画冊》、趙珣 (ちょうじゅん、明) の《双松図》、陸㬙 (りくい、清) の《山水図》、花鳥画として、陳嘉言 (ちんかげん、明) の 《花卉図冊》、胡湄 (こび、清) の《花鳥図》、そして風俗画、張翬 ちょうき、明) の《雪中売魚図》、さらに人物画、康濤 (こうとう、清) の《桐陰仕女図》など、知られざる逸品が一堂に会します。この機会に、明清絵画の多彩な魅力を味わっていただければ幸いです。