井上よう子自選展によせて
井上さんと最初の出会い (1989年) から四半世紀近くに及びます。もともと抜群の描写力を持っておられますが、様々な体験と、弛みなく重ねられた努力により生み出された、清冽な抒情を湛え、魂への深い浸透力をもった作品は、高い評価に繋がってきました。その軌跡に寄り添ってこれたことをうれしく思います。今回は、初期の名作「遠くでなにが起ころうとここは静かだ」(1982年) から、新作にいたるまで、作家による自選作品で構成してみました。誠実な歩みによる結晶を、みなさんと共に、ゆっくりと味わいたいと思います。
島田 誠