自然がみせる一瞬のきらめき。もう二度と見ることのできない美の瞬間。
佐藤太清は、自然との一期一会の出会いを、詩情あふれる解釈で絵画に映し、受け止めた心象を永遠のものにしました。
半世紀にわたり板橋区に在住した日本画家・佐藤太清は、大正2年 (1913) 京都府福知山市に生まれました。出生直後に両親を失うという苦難に遭遇しますが、故郷の自然に触れ、その情景を描く体験を重ねて、絵の道を志します。18歳で上京し、児玉希望の内弟子として日本画の修行を始めました。
10年の研鑽を経て、新文展に「かすみ網」で初入選。その後、嵐や炎などの自然現象を崇高の視点であらわし、また太清の代名詞ともいえる連作《旅シリーズ》では、自然が持つ美しさに精神性を与え、花鳥風景画という新分野を確立。平成4年 (1992) には文化勲章を受章。日本画壇を代表する作家として、戦後の日展を支えました。
本年、佐藤太清は生誕100年という記念すべき区切りを迎えます。本展では板橋区立美術館及び福知山市佐藤太清記念美術館の所蔵作品、全国の美術館や個人所蔵の作品、また太清の没後に発見され、このたび修復を終えた作品や未公開作品を一堂にあつめ、画業70年をたどります。