盛岡在住の杉本吉武 (1944-) は、岩手に根差した活動を続けてきたグラフィックデザイナーです。しかしその活動は、国内をはじめ海外の国際ポスターコンペでの数々の受賞歴が物語るように、洗練された印象的なビジュアルイメージを地方から発信し続けてきました。
「三陸・海の博覧会」、「国民文化祭いわて」をはじめ、コンサートや各種イベントのポスターを数多く手がけ、1986年に「ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ」特別賞を皮切りに、1989年には「フランス革命200周年祭記念人権ポスター展」で世界の66人のグラフィックデザイナーに選ばれるなど、国際的にも高い評価を得ているデザイナーです。杉本のデザインの特徴は、単純化された形態と明快な色彩にあります。テーマを絞り込み本質を浮き上がらせ、研ぎ澄まされたアイディアでビジュアル化していきます。その制作過程も特異で、今日、総デジタル化するデザイン界にあって、いまだにアナログな制作スタイルを変えず、手作業で戦う稀なデザイナーでもあります。
杉本の半世紀にわたるデザインを振り返るとき、テレビCMやスタジオデザイン、イベントポスター、商品ロゴ、シンボルマークと多種多様なグラフィカルなデザインを手がけてきました。このように多面的なセンスを発現する杉本作品のなかから、本展ではB全版ポスターに限定して、新作<花巻シリーズ>を含め約110点の作品で杉本吉武の50年にわたるグラフィックデザインの歩みを展観します。