永遠を希求する反復―桑山忠明の空間
現代における都市生活者の周辺では、物品の使い捨てが日常化し、建物も比較的短期間に生滅をくり返して街は変貌する。だが、こうした空間の生々流転は元来世の常で、今更嘆くことでもないとも言える。されど、私たちは永遠性への希求を捨て去ったわけではない。今という時代と場を表徴する仕事を、共に生きている人々の<記憶>に深く刻みつけ、次世代への伝承と転生を期待する―それが永遠性に近づく一つの方法であることを知っている。とくに美術の世界では、それを目指して古来、優れた匠たちが複雑精緻な超絶的な手業により、人の記憶の深層に残る作品を生み出して来た。
ところが、桑山忠明はニューヨークに渡って半世紀余、従来の美術家とは全く対蹠的な方法でそれを実現させて来た。つまり、感情的、情緒的な要素を一切排除し、近年では均一なメタルの方形、単体小パネルを規則正しく一定間隔で壁面に展示して、その場に純粋、静謐な空間を現出させるのである。そこは自分自身とのめぐり会いの場でもある。今回の展示は正方形小単体6点、横一列の展示なのだが、その律動的な反復には永遠へと続く振子の音を聞く思いがする。
馬場駿吉 (名古屋ボストン美術館館長)