中国で生まれた水墨画が日本に本格的にもたらされたのは、鎌倉時代末期から室町時代にかけて。そこで大きな役割を果たしたのが、日中間で僧侶や文物の往来が盛んに行われた禅宗です。しかも禅宗が文芸や政治と結びついたこともあり、水墨画は、絵画の技法という以上の大きなインパクトを中世の文化に与えました。
本展は、総数約50件の作品により、14世紀後半から16世紀までの水墨画の展開を眺め、多彩な魅力をご紹介するものです。水墨を用いて描きだされた清らかな観音図にはじまり、理想の風景を描いた山水画、禅味あふれる人物画、水墨をベースに華やかな彩色を加えた花鳥画まで、充実のコレクションをご覧いただきます。清雅なる室町水墨の世界をご堪能ください。