2009年、2011年に当館で好評を博した特別展「ムットーニワールド からくりシアター」の第3弾としてムットーニ氏 (本名 武藤政彦) の作品を紹介します。
自動人形師として知られるムットーニ氏は、1956年に横浜市に生まれ、現在は八王子市と同じ多摩地域の国立市で活動するアーティストです。その作品は油絵や彫刻といった既存の美術作品とは違い、箱などに内蔵された人形や様々な演出装置によってある物語が表現されます。「人形がただ1回転するだけで、物語が成立するかもしれない…」との着想から生まれた作品は西洋のオートマタ (自動人形) や日本のからくり人形とも良く似ていますが、氏の作品は人形や装置の多様な動きにあわせ音楽、効果音、光 (照明)、そして時には本人の語りなどが入り、多くの要素が重なり合いながらある世界観や物語がつくられます。その意味で人形や動物、モノなどのリアルな動きの再現が中心のオートマタとは異なります。また、作品の主役がその場で繰り広げる物語や空間にある点は氏の作品の大きな特徴で、観客はまるで映画や演劇を観ているような感覚に陥ります。その特徴から作品は総合芸術と評され、また、本人のみならず作品そのものがムットーニとも呼ばれます。今回は主な大型、中型、室内型作品などお馴染みの自動人形作品に加え、より大がかりな展開が魅力の組作品も展示。油彩画、レリーフ画、ラフスケッチなどもあわせ、これまでよりも充実した内容で紹介します。また、代表作だけでなく新作も公開。恒例となった作家本人による上演会 (本人の語り) も交えながら、光、動き、そして音楽と言葉が織りなす箱の中の物語「ムットーニワールド」を今回もお楽しみください。