現実の裂け目から異空間を覗き見るような写真表現で、1970年代から国内のみならず、オーストリア、ニューヨーク等でも紹介され、国際的に高い評価を得ている須田一政の個展「凪の片 (なぎのひら)」を開催します。
1940年、東京神田に生まれた須田は、洒脱な視点と卓越した技術で人間、生活、街などの裏側へと視線を誘うような写真群を1960年代から発表してきました。本展覧会は、東京都写真美術館が新規重点収集作家として収集し続けてきた代表作<風姿花伝><物草拾遺><東京景>に初期作品の<紅い花><恐山へ>を加え、さらに写真家活動50周年を迎える本年、制作した最新作<凪の片 (なぎのひら)>と合わせて構成します。
「凪 (なぎ)」という風が止まる時間特有の感触に似た、日常と非日常を往還するような作家の視線が、一片 (ひとひら) の写真となって降り積もっているかのような展覧会です。今はなき風景、人物像や、昭和から現在へと引き継がれる日本の風俗を特異な視点で切り取る須田一政の写真表現を、精緻な銀塩プリントでご堪能ください。