岐阜県土岐市在住の伊藤慶二 (1935-) は、若いころに油絵を学び、そして美濃の地で早くから陶の造形的な仕事に取り組んできました。20代半ばより師事した陶磁器デザイナー・日根野作三との出会いから、伊藤は現代工芸クラフトに関心をもち、やきものに対する姿勢の根幹を形作っていきます。造形物シリーズとして制作を続けている「HIROSHIMA」「沈黙」、そして「尺度」も展開を重ね、近年では「祈り」「鎮魂」シリーズを発表。その作品が生む空間は、静かな思索の時間を私たちに投げかけてきます。
本展は、旧新作による陶の造形物、クラフトに伊藤独特の表現が結びついた作品、そして若い頃から近作までの絵画という三つの伊藤の表現世界で構成します。とくに新作「道」をテーマとする絵画、「NAGASAKI」シリーズの作品は本展で初めて発表されます。陶の造形物は、外光のはいる当館ギャラリーの一室に展示を予定しており、ここに伊藤慶二作品による新たな空間構成が生まれ、鑑賞を楽しく誘うことでしょう。