クリストファー・ドレッサー(1834-1904)は、19世紀後半に活躍した英国のデザイナーです。植物学者としてスタートした彼は、後に装飾美術の世界へ転身し、陶磁器、金属器、ガラス、家具、テキスタイルなど生活全般に及ぶデザインを手がけました。ニコラス・ペブスナーは、ドレッサーを英国における最初のインダストリアル・デザイナーと評しています。
日本に興味を持っていたドレッサーは、明治9年(1876)に来日しました。その時、英国から日本へ寄贈された美術工芸品を携え、国賓として明治天皇に謁見しています。ドレッサーは、明治政府の依頼によって日本各地を旅行し、多くの美術工芸品の生産地を見学して、殖産興業のためのアドバイスを与えたのです。彼の意見は『英国ドクトルドレッセル同行報告書』に記録されました。また、彼の帰国後、息子が来日して神戸に定住し「土列査」家を名乗るなど、興味深い事実が明らかになっています。
ドレッサーは、1882年に『日本―その建築、美術、工芸』を出版。ヨーロッパに日本の建築や美術を紹介し、当時大きなブームを呼んでいたジャポニスム運動の展開にきわめて重要な役割を果たしました。
ドレッサーは、日本の陶磁器や金属器などを幅広く研究し、それによって西洋の伝統的な装飾の概念から抜け出すことができたといえるでしょう。そして、彼のデザイン・ポリシー「真実、美、力」が示すように、素材の美しさと機能に応じたシンプルでダイナミックなデザインを完成させていくのです。彼の作品は、100年以上経った今でもその斬新な輝きを失っていません。
本展は、クリストファー・ドレッサーの日本初の回顧展です。英国の個人コレクションの名品を核に、ドレッサーの芸術に多大な影響を与えた日本の工芸品を加えた約250点の作品によって、モダン・デザインへの道を切り開いたドレッサーの軌跡をたどります。
■講演会
「クリストファー・ドレッサー、ザ・カルト・オブ・ジャパン」
日時:4月13日(土)14時~
■美術講座
「ドクトル・ドレッセル博士の日本漫遊記」
・日時:4月21日(日)14時~
「ドレッサーのデザイン・ポリシー」
・日時:5月5日(日)14時~
「英国ヴィクトリア朝の生活とドレッサー」
・日時:5月12日(日)14時~
・講師:郡山市立美術館学芸員・・・