神田日勝へのオマージュ
9年前に遡る。全国美術館会議での池田20世紀美術館長(当時)林紀一郎先生の「細密描写と風土性」という側面から斎藤画伯と日勝作品との共通性に着目した示唆が道を拓いた。2005年、北海道立近代美術館に出かけた僕は、心誘われるままに安城に飛び、書肆「がらんどう」ギャラリーの「斎藤吾朗展」で「モナリザ」から新作至る作品群に接した。吉地オーナーの好意でのギャラリートーク後の宴が、翌年の「斎藤吾朗の軌跡展」に連なる。
作品を貫く心の原点というべきモナリザと風土への深い想い、三河を基点にしつつも訪れた地域に寄せる洞察、その根底に流れる歴史に根ざした視座、もの一つ一つを丁寧に観察する眼、精緻な描写力に裏打ちされた絵巻物を連想させる物語性溢れる作品群が、今再現される。
「室内風景」に心を寄せ、日勝没後独立展の会員として制作を続ける画家。開館20周年にふさわしい企画として二人の作家の画魂が競演する。
神田日勝記念美術館長 菅 訓章
絵という字は「糸に会う」と書きます。私は独立展で日勝さんの糸に出会い、2006年には個展を開いて頂きました。2008年に巡回された東海地区の画家達による「風景の会」絵画展では出品作「長滝の延年 花奪い祭り」の絵の中に日勝さんの馬を奉納額として描かせて頂きました。地方で創作活動を続ける私はセザンヌ、モネ、ゴッホ、日勝さんたちの生き様に共感しています。
今回2度目の個展を開いて頂くことに感謝して、新たに日勝さんと周りの人々へのオマージュ作品を制作しました。織り重なっていく赤い糸の物語をご高覧頂ければ幸甚です。
斎藤吾朗