当館は現代美術館として、愛知県を中心とした地域にゆかりのある、評価すべき現代作家を紹介することも使命のひとつとしています。現代作家の個展・回顧展としては2010年の「庄司達展」、12年の「原裕治展」に続いて3回目となる本展は、愛知を拠点に50年にわたって精力的な活動を続ける石黒鏘二の個展です。
1935年、名古屋市に生まれた石黒鏘二は、県立旭丘高校美術科を経て東京藝術大学美術学部彫刻科の石井鶴三教室に学び、卒業後は愛知に戻りマネキン制作会社に勤務しながら制作を続けます。業務を通して様々な技術・技法に触れたここでの経験は、後に「マネキン大学卒業」を自称するように石黒にとって大きなものでした。そして1969年に発表した鉄溶接による彫刻作品《紳士録》のシリーズが注目を集め、以後ステンレススチールによる野外彫刻や、鋳造した植物、文字等によるインスタレーションなど幅広い活動を続けていきます。その間現代日本彫刻展、ヘンリー・ムア大賞展など多くの彫刻展で受賞を重ね、1989年に愛知県芸術文化選奨文化賞を、2004年には文部科学省地域文化功労者賞を受賞します。一方名古屋造形芸術大学 (現名古屋造形大学) において開学以来教鞭をとり、1998年から8年間は学長職を務めるなど後進の指導にも尽力しています。
本展では初期の鉄溶接による彫刻群から、「言葉」「記憶」をテーマとしたインスタレーションに至るまで、作家自身の言葉と共にその軌跡を振り返ります。愛知を代表する現代作家・石黒鏘二の世界をお楽しみください。