日本の絵画にはさまざまな「妖怪」が登場します。「妖怪」とは近世に登場した言葉で、その定義はさまざまです。
近世以前の絵画に描かれた「妖怪」には当時の人々が持っていた自然に対する畏れや信仰心などを読み取ることができます。江戸時代には、都市で発達した出版文化を背景に、「妖怪」は広く庶民に受容され、現代に通じる妖怪像が形成されました。近代以降も絵画に「妖怪」が登場しますが、それらは必ずしも伝統的な表現ではなく、画家の個性を反映した多様な表現がとられています。そして現在では、「妖怪」はキャラクター化され、雑誌やテレビといったマスメディアを通して、わたしたちの日常生活の中に身近に存在しています。
本展覧会は、江戸時代の浮世絵から、近代の日本画や油彩画、そして現代美術まで、さまざまなかたちで表現された「妖怪」を通して、日本人の世界観の変遷をたどります。