最愛の女性といわれた彦乃との死別を経て、絵筆を執ることもなく失意の日々を送っていた夢二の目前に現れた女性、佐々木カ子ヨ。
夢二によって「お葉」と呼ばれた彼女は、画家の創作欲を喚起する、天性のモデルとも言うべき存在でした。「お葉」の登場によって夢二式美人画は、頽廃的な雰囲気を身に纏った新たな女性像として再生します。独特のエロスと、頽廃美を漂わせた夢二式美人は、やがて〈大正ロマン〉と呼ばれる一時代を象徴する存在となります。
本展覧会では、昨年10月に開催した「竹久夢二とその時代Ⅰ」展にひき続き、竹久夢二の後半生……お葉との出会いから、デザイナーとしての商業美術活動への傾倒、また関東大震災を契機に失速したとされる〈夢二ブーム〉の動向と併せ、起死回生を狙って実現させた宿願の欧米外遊と、早過ぎたその晩年について検証します。
夢二の過ごしたこの15年間は、流行児であったが故に、やがて時代に翻弄される運命を背負わされたひとりの画家の、孤独な闘いの足跡といえるでしょう。