「祇園さん」と京都の人たちに親しみを込めて呼ばれる八坂神社。祇園祭の神社としてあまりにも有名ですが、どのような宝物を伝えているのか、これまでまったくといってよいほど知られていませんでした。本展観は、昨年当館が実施した宝物調査の成果を踏まえ、同神社との共催で、社宝の数々を一堂に公開するものです。
八坂神社の歴史は、平安時代前期に創建された観慶寺にまで遡ります。古代の姿を偲ぶべく、境内から出土した古瓦などを展示します。鎌倉時代の獅子・狛犬も、運慶作と伝える彫刻の名品です。
中世の八坂神社の様子は、紙背に元徳3年(1331)の年紀がある隆円筆の祇園社絵図や、同社の執行日記(いずれも重文)によりうかがうことができます。とくに後者は、南北朝時代における動乱の京都の情勢をつぶさに伝えてくれる第一級史料です。
江戸時代に入ると、承応3年(1654)の遷宮に際して現在の本殿が造営され、神社全体にわたる整備が一気に進みました。この年、牛頭天王・婆利女・八王子という三柱の祭神にたいへん豪華な神宝類が奉納されました。京都刀工の藤原国路が制作した太刀(重文)や剣をはじめ、さまざまな調度・装束類がすべて三種ずつ整えられ、まさに近世工芸の宝庫といえます。これらを、ほぼ完全な形で初公開します。
祇園、そして京都の人々の崇敬を集めた八坂神社の秘められた姿が、いま明らかとなります。ご期待ください。