岡崎市美術博物館(マインドスケープ・ミュージアム)では、明治末から大正・昭和にかけて、日本中の若者の心をとらえて止まない作品を矢継ぎ早に発表、一般民衆に絶大なる支持を受けた時代の寵児、竹久夢二(1884-1934)を取り上げます。
その名から、すぐさま
♪待ーてーど 暮ーらせーど 来ーぬ人を…♪
と≪宵待草≫を口ずさむ人、あるいは例の物憂げな夢二式美人を思い起こす人、またある人は、作家の代名詞ともなっている自由奔放という言葉どおりの人物を想像するなど、性別や世代を問わず誰しもが何らかのかたちで、夢二に関する或るイメージをお持ちなのではないでしょうか。しばしばその中には、華やかな恋愛遍歴ゆえに誤解を受けて、仕立て上がった安っぽい人間像が含まれていることもあるでしょう。が、それにしても、その知名度、これは他の作家の及ぶところではありません。
夢二は、日本画、油彩画、水彩画、版画から楽譜や書籍の表紙・小物等のデザインに至る美術ジャンルのほかに、詩人としても活躍、童話、小説、評論、エッセイなども手掛けており、その多彩極める仕事ぶりにはまったく驚かされます。夢二的な抒情性に溢れるそれらの魅力あるスタイルは、時代を超えて、今も多くの人々に愛されています。
今回の展覧会は、数多い竹久夢二の作品の中でも、その充実したコレクションを誇る夢二郷土美術館から、日本画・油彩・水彩・素描・版画・デザイン・装丁をはじめ、あまり紹介されることがない外遊作品、文学とも深くかかわった資料も含め、総点数約250点余で構成し、夢二芸術とその精華をご覧いただきます。