バロックから近代にかけての、一般の市民生活の中で広く愛されたヨーロッパの絵画を、蒐集家 長坂 剛 氏による「長坂コレクション」から選りすぐった58点の作品により展望します。
バロック絵画は、オランダ、スペイン、フランスを中心に17世紀に開花しました。均整のとれたルネサンス美術に対して、より強い表現効果を求め、強い色彩の対比や光と影の対比、曲がりくねった線や激しい動きなどの、劇的で躍動感溢れる表現を特徴としています。その迫力と感覚に訴える魅力で人々に親しまれました。また、人物を中心とする従来の画題に、風景、風俗、静物などが加わり、広がったのもこの時代でした。
時を経た18世紀から19世紀、美術史上は、リアリズムから印象派への流れがクローズアップされていますが、これらは当時最先端の表現で、一般にはそれほど受け入れられず、ロマン派や古典主義などのアカデミックな絵画が求められました。
「長坂コレクション」の中の画家たちは、こうした市民にも手の届く身近な存在でした。彼らは、市民の共感を得られるスタイルにより、信仰の尊さを教え、自然の美しさを感じさせ、生きる楽しみや喜びを表現しました。
当時のヨーロッパの一般社会の雰囲気や美意識を伝えてくれる作品の数々は、その頃の市民が自分たちのために買い求めたものであるからこそ、現代の私たちにもわかりやすく親しみのもてるものとなっています。
本展覧会をとおして、「絵画を鑑賞する楽しさ」を改めて感じていただければ幸いです。