昭和14年、初めて室生寺を訪れた土門拳。その時に弥勒堂の釈迦如来坐像に出会ったことが、のちの長い『古寺巡礼』への契機となりました。大型カメラでカラー撮影に挑んだ『古寺巡礼』は、土門の写真家人生の大半を費やした文字通りのライフワークとなります。造本・装丁、掲載順序、写真選択、寸法、説明文の位置にいたるまで土門が手掛けたこの写真集は、当時の大卒の初任給が1万円台の時代に2万3000円もした超豪華本として世に出ました。
『古寺巡礼』第一集が刊行されたのは昭和38年のこと。第一集の刊行から50周年を迎えた今年、現代の最高の技術をもって新たに制作された大判プリントで、迫力の仏像・建築の姿をお楽しみいただけます。今回の展示では法隆寺、薬師寺、室生寺、神護寺など、飛鳥~平安前期の寺院に絞ってセレクトいたしました。今なお色褪せない古寺巡礼の魅力を堪能できる作品展です。