石や木などの塊を外側から削り取り、作品として表現する彫造と呼ばれる技法は、洋の東西を問わず古くからある主な彫刻表現の一つです。石や木をノミで彫り進める制作方法は、粘土による作品制作より、素材の堅さや大きさ・形の制限などから制作上、抵抗感を伴いますが、自然の素材と対話し、その特性を引き出す作家のたゆまぬ努力によって、繊細な表現やダイナミックな表現に結びつきやすいというよさもあります。
今回の当館所蔵品による企画展では、仏像など日本古美術品の保存修復に力を注いだ新納忠之介による模刻とオリジナルの木彫作品、当館横にある西郷隆盛像の作者で単純化した形態と豊かな量感を追求した安藤照の石彫作品、そして木の持つ有機的な魅力を抽象的な形態で表した宮園広幸の南日本美術展海老原賞受賞作を展示いたします。
いずれの作品においても素材の持つ材質感は重要な要素であり、彫りの技法とあいまって作品のイメージや形などの造形性をより深めています。彫り・刻み・削ることで生み出される造形の美しさをお楽しみください。