時の旅人、ダレン・アーモンドが光と音で紡ぎ出す人類の叙事詩
ダレン・アーモンドは、写真や映像、時計といった素材を使い、現実と記憶の世界が交錯する作品を創出するイギリス人現代美術作家です。時間と空間への心理的な関わりに関心を抱くアーモンドは、時計の針や数字が示す数値としての時間ではなく、感覚領域における時空間の存在を作品の中で浮かび上がらせ、遥か古 (いにしえ) から続く悠久の時の流れと、今を生きる私たちの心を繋げます。
アーモンドにとって、旅は制作にとって重要な役割を担っています。世界各国の古代遺跡や産業遺跡、自然を訪れ、そこで目撃した風景を文明化における人間の営みの威厳、儚さを呼び起こすような作品へと昇華させます。
日本の文化と自然はアーモンドに創作のインスピレーションを与えてきました。アーモンドは1990年代より日本を訪れ、旅先で出会った風景や出来事に着想を得た作品を制作しています。本展では京都の比叡山でおこなわれている千日回峰行という厳行をつとめる僧侶に伴走しながら撮影した映像を基に制作した映像インスタレーション<Sometimes Still>(2010年)、夜明けの最初の日の光で比叡山を撮影した<Civil
[email protected]>(2008年)、茨城県の桜を撮影したシリーズ写真<Day for Night>(2006年)を展示いたします。こうした作品に加え、大型映像インスタレーション<All Things Pass>(2012年)、400個以上の時計を使った近年の代表作<Tide>(2008年)、シベリアで撮影した映像からなる新作<Less Than Zero>(2013年)が展示されます。
1999年から現在に至るまで、アーモンドのさまざまな取り組みを紹介する本展は、人々を未知の時空間への旅へといざない、新しい知覚を開く場となります。