(公財)常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第227回として、「木立を抜けて 村田猛展」を開催いたします。
日本画家・村田猛は、大正7年多賀郡中郷町(現・北茨城市)に生まれました。生家は農家でしたが、幼い頃から絵を描くことが好きなことから、親族の紹介で束京の手描き友禅工房に入門しました。ここでの仕事は楽しかったと後に述懐したといいますが、折しも始まった戦争のため入隊、中国に渡ることになります。終戦となり帰国した後は会社経営を始めましたが、絵の道をあきらめきれず寸暇を惜しんで絵を描くようになりました。
村田の転機は酒井三良との出会いから訪れます。三良の勧めで日本美術院に出品するようになった村田は、昭和を代表する日本画家で三良と親しかった奥村土牛の知己を得ました。土牛が主宰する八幡会に参加した村田は、研究会においては必ず一番に姿を見せて会場の準備などを行うなど熱心な様子を見せていたといいます。土牛の厳しい制作姿勢から村田は写生の重要性など多くを学びました。
村田の作品は画面いっぱいに広がる松や冬枯れの枝と、その隙間から見える海や建物という近景と遠景の対比が特徴です。写生を繰り返して考え抜かれた枝ぶりとその奥の広々とした空間が、構成上の面白さと奥行きを与えています。一方で外国の郊外風景を描いた作品では、牧歌的なモチーフを優しい色調で描いています。
今展では第1会場(藝文ギャラリー)にて村田猛の優品16点を二期に分けて展示するほか、第2会場(藝文プラザ)でも院展に出品した大作を展示いたします。