生誕110年、没後50年を迎えてますます世界からの敬愛を集める監督小津安二郎(1903-1963)―その豊饒な映画世界の探究に終わりはありません。この大きな区切りとなる2013年、フィルムセンターは松竹株式会社と共同で後期のカラー映画4作品のデジタル復元を行うとともに、監督の誕生日・命日である12月12日を初日とする展覧会「小津安二郎の図像学」を開催し、小津作品を読み解く新たな視点を提示します。
これまで小津監督の作品は、独自の厳密な画面作りや脚本術、監督をめぐる文化的状況や監督自身の芸術観といった視点で主に語られてきました。しかしその一方で、作品を支えてきた視覚的な要素、監督の美的嗜好をはぐくんだ諸芸術、そして自身による巧みなアートワークが強い関心の対象となることはありませんでした。この展覧会では、小津監督の作品と実生活における絵画・デザイン・文字・色彩といったエレメントの重要性を示しつつ、その洒脱で軽やかな感覚を明らかにします。さまざまな図像の間から立ち現われる“永遠のウルトラモダン”、小津芸術の粋をぜひご確認ください。
企画協力:古賀重樹 (日本経済新聞編集委員、「1秒24コマの美」著者)