萬古焼は、江戸時代中期に伊勢地方(現在の三重県四日市近辺)に、土地の豪商沼波弄山(ぬまなみろうさん)によって開窯されました。幼い頃から茶道を嗜む趣味人だった弄山は、作陶には全くの素人だったにもかかわらず、京焼の技法を取り入れた新しい陶器を完成させ、これが永久に伝来するようにと「萬古」「萬古不易」と印を入れ、萬古焼と名付けたのです。弄山の死後、彼の手による作は「古萬古(こばんこ)」と呼び珍重され、その後伊勢地方各地で萬古焼の再興がされ現在にいたっています。
萬古焼の特徴は、何と言っても美しい赤絵と異国情緒溢れる絵付けにあります。特に繊細な赤絵で絵付けされた仙盞瓶(せんさんびん)という取っ手付の瓶は、他の陶器には見られない萬古焼の逸品です。
今回は、質量ともに第一級の萬古焼のコレクションを所蔵する岡田文化財団の所蔵品から、瓶、鉢、花器、茶陶器、食器類など200点余りを展覧します。なお、本展が首都圏では初めての「萬古焼展」となります。