アントニオ・ロペス(1936- )は現代スペイン・リアリズムを代表する作家です。スペイン、ラ・マンチャ地方の農家に生まれたロペスは、14歳で王立サン・フェルナンド美術アカデミーの美術学校に入学し、絵画を学びます。この時から既に彼は写実的な作品の制作に才能を発揮し、以後その卓越した技術で作品を発表し続けています。彼が描く対象は、家族の肖像や室内の情景、マドリードの街頭風景、植物など多岐に渡ります。その制作過程は非常にゆっくりとしていて、一枚の絵を仕上げるのに数年の時を費やすことも珍しくありません。彼は刻々と変化する対象の一瞬をカンバス上にとどめることで、逆に時間の存在を鑑賞者に強く印象づけており、彼の描く肖像画や風景画には、モデルの積み重ねてきた人生の年輪やスペインの乾いた空気までもが感じられます。
本展は、初期の美術学校時代の作品から近作まで、ロペスが手がける油彩・素描・彫刻の各ジャンルから代表作約65点を厳選して紹介する、日本初の個展です。
この機会に、スペイン現代美術の巨匠ロペスの世界をお楽しみください。