岸田劉生(1891-1929)は、明治後期から昭和初期にかけて、近代日本洋画の歩みに最も独創的な芸術的境地を開いて大きな足跡を残しました。17歳で黒田清輝に油彩画を学び、 20歳で武者小路実篤らの文芸誌『白樺』を通じてゴッホやセザンヌを知り、ドイツの画家デューラーら北方ルネサンスの様式に感化を受けてからは精緻な写実を通じて「内なる美」を追求しました。自らの内面に見いだされる深き神秘に写実の道を求め、ついには東洋的な審美観にもとづく超現実的な「写実の欠如の美」にまで到達していきます。
本展は、笠間日動美術館のコレクションにより、白樺派の文学者らとの交流や、後年に傾倒した東洋の美にも触れながら、油彩、水彩、墨画、素描、装丁画、版画作品等に関連資料を含めた約130点で劉生芸術の軌跡をたどります。
《自画像》《麗子十六歳之像》《村娘之図》などの油彩画やパステル画の代表作に加え、装丁画も数多く出品される本展では、劉生の代名詞ともいえる長女麗子の像がさまざまに表されている点が見どころの一つです。また、初公開作品を含め、洋画家として知られる劉生の日本画を広く紹介し、その芸術の根底に流れる精神を紐解きます。
さらに、当地域に関連した特別展示として、1921年から劉生に師事して交流をもった高岡の洋画家雄山通季(1899-1968)ゆかりの書簡類と、劉生の絵日記にも記載のある《麗子微笑》(1922年、本展ポスター掲載作品)など、雄山氏旧蔵の劉生作品を併せて紹介します。
どうかお見逃しなくご覧ください。