沖縄は、古くから中国・東南アジア・日本という周辺地域の交易の中継地として重要な拠点でありました。その交流によって沖縄には多種多様な文化がもたらされ、気候風土と相俟って沖縄独自の文化が育まれました。中でも染織は素材・技法・色彩・文様の豊かさにおいて眼を見張るものがあります。その表現の多様性が多くの人々を魅了してやみません。
沖縄の織は、亜熱帯の気候に即して、苧麻、芭蕉、桐板、木綿、絹などの素材が様々な工夫や技法を凝らされて織られていることが、その爽やかな風合から見てとれます。縞、絣や格子柄には、少ない色使いで眼に清々しい表現や、多彩な色糸の使用により鮮やかな文様が織り出されたものなど、多くのヴァリエーションが見られます。今展観では、縞や絣とともに沖縄の織を代表する花織(浮織)に着目し、技法の継承に貴重な資料となる作品を展示いたします。平織の組織に経糸あるいは緯糸を地色と異なる色糸で浮かせて織り込み、紋様を表わす浮織は「花織」と称されました。沖縄各地でそれぞれ特徴ある花織が創られましたが、一時期途絶えていた花織の技法については、その復元に関する資料も併せてご覧いただきます。
また、沖縄の染めには、艶やかな色彩と多彩な文様の紅型、藍や紺の地色に文様をのせた藍型や筒描が見られます。紅型・藍型は大胆な大模様から花織の裏地などに使われた小紋柄まで、文様を表わす柄の大きさに合わせていくつかの型紙の種類があります。その型紙を用いて糊置をし、色差し・地染めなどの作業によって染め出されました。華やかな色使いは沖縄の明るい陽光から生み出されたといえましょう。描かれた文様は松竹梅をはじめとした吉祥文様、龍・鳳凰や瑞雲などの中国の文様、枝垂れ桜や流水などの日本の文様が見られ、周辺地域との文化の交流を沖縄独自の表現に高めたすがたを見ることが出来ます。
今展観によって、幅広い豊かな内容と表情を持つ沖縄の染めと織の数々をお楽しみください。そして、今後の新たな創造へとつながる、先人の智恵の結集ともいえる技法や工夫をあらためて見直す機会となれば幸いです。